おまえさん

2012-05

ディスチミア親和型うつ病: 多少不真面目なうつ?

先日の朝まで生テレビで、「雅子様の御病気は適応障害にしては長すぎる、新型うつ病(ディスチミア親和型うつ病)なのではないか?」と、精神科医の斉藤環があくまで憶測として言っていた。

臨床精神医学 2005, 34,687- 樽味伸、によるとディスチミア親和型うつ病とは、うつ病の診断基準(DSM-IVにおける大うつ病エピソード)を満たすが、はたして彼らをうつ病と診断してよいのだろうか?と診断者が戸惑うような患者がおり、その特徴をまとめたもの、のようだ。
1) メランコリー親和型には近似しにくい経歴
2) 輪郭のはっきりしない不全感と心的倦怠
3) 抑制症状や罪業感に薄く、回避行動が主体的、ときに他罰的
4) しかし、大うつ病の診断基準を満たす
( 5) 気分変調性障害と診断するには、罹病期間が短すぎる)
という像だそうだ。
ディスチミア(dysthymia)の語は、字義通り「不機嫌」「活力に乏しい」という表層的ニュアンスで使用しているとのこと。

以下が、メランコリー親和型との差異。


ディスチミア親和型うつ病とメランコリー親和型うつ病の対比
 ディスチミア親和型メランコリー親和型
年齢層青年層中高年層
関連する気質スチューデントアパシー
退却傾向と無気力
執着気質
メランコリー性格
病前性格自己自身(役割ぬき)への愛着
規範に対して「ストレス」であると抵抗する
秩序への否定的感情と漠然とした万能感
もともと仕事熱心ではない
社会的役割・規範への愛着
規範に対して好意的で同一化
秩序を愛し、配慮的で几帳面
基本的に仕事熱心
症候学的特徴不全感と倦怠
回避と他罰的感情(他者への非難)
衝動的な自傷、一方で”軽やかな”自殺企図
焦燥と抑制
疲弊と罪悪感(申し訳なさの表明)
完遂しかねない"熟慮した"自殺企図
薬物への反応多くは部分的効果にとどまる(病み終えない)多くは良好(病み終える)
認知と行動特性どこまでが「生き方」でどこからが「症状経過」か不分明疾病による行動変化が明らか
予後と環境変化休養と服薬のみではしばしば慢性化する。
置かれた場・環境の変化で急速に改善することがある。
休養と服薬で全般に軽快しやすい
場・環境の変化は両価的である(時に自責的となる)


ちなみに DSM-IVにおける大うつ病エピソード とは
--------------------
大項目:以下のうち1つ以上が明瞭に存在すること
1.抑うつ気分
2.興味または喜びの喪失

小項目:以下のうち4つ以上が明瞭に存在すること
1.体重やしょくよくの減少あるいは増加
2.不眠または睡眠過剰
3.精神運動性の制止または焦燥
4.易疲労感あるいは気力の減退
5.無価値感、罪悪感
6.思考力や集中力の減退
7.自殺念慮、自殺企図
--------------------

抑制症状≒精神運動抑制とは
「"精神機能の抑制"と"運動性の抑制"を合わせた総称である。
精神機能の抑制では、忘れっぽい、覚えることが苦手になる、頭が早く回転しない、自分では決定できない、集中力がなくなるといった軽い認知症に似た症状が出現する。
これに対して運動性の抑制とは、何もやる気にならない、おっくうである、面倒である、などの症状をいう。」


また、適応障害とは
「環境変化や心理社会的ストレスにより,家庭・学校・職場などでの目的に合った行動が困難となったり,自らの心理的満足が得られなくなった状態。近年の精神医学領域での適応障害とは,そのような不適応の結果として情緒面や行為の上で特有の症状を示す精神疾患の一範疇として定義されている。すなわち対人関係や仕事の問題,災害,移住などのストレス因子への曝露によって,抑うつ気分,不安,苦悩,緊張,怒り,日課の遂行ができなくなる,非社会的行動などの症状が出現する。そうした精神症状の発現には個人の脆弱性だけではなく,ストレス因子の存在が必須であり,症状はストレス因子が消失すれば数か月程度の期間をおいて消失することが多い。


朝まで生テレビの中で、斉藤環がディスチミア親和型うつ病を"不真面目なうつ"
例えば、
「仕事は出来ないけど遊びは出来る」、
「公務は出来ないけどフランス料理を食べにいくなら何時間でもいい」、
と説明した。
それに対して香山リカは、
「こういう状態(適応障害)になるまでに雅子様は過剰適応していたはず。
公務でもただだまって聞いていればいいようなものでも下調べをして真面目すぎる程やって・・・
儀礼はそれこそ"儀礼的"に立ち会うだけでもよかったようなものもあるはず。
その結果、精神のエネルギーを消耗してしまったのでは?」
というようなことを発言したように思う。

また同番組で誰かが、「雅子様にとっては日々の生活自体が、日本という"職場"での"仕事"のようなもの」と発言していた。


職場不適応症
とは
「職場不適応症とは専門用語ではなく,職場にうまく適応できずそこでの活動に障害が生じていることを示す一般用語である.したがって,その治療にあたっては,まず精神医学的な診断を適切に行う必要がある.それは,大うつ病性障害や気分変調性障害などの気分障害,全般性不安障害や社会不安障害などの不安障害,うつや不安を伴う適応障害などであり,その診断に準じて治療方針を立てることが必要になる.
 もちろん精神症状が強いときには,その症状に応じた薬物療法を行う.うつ病性障害の場合には選択的セロトニン再取り込み阻害薬やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬などの抗うつ薬を投与し,不安障害の場合にはセロトニン再取り込み阻害薬や抗不安薬を検討する.不眠が強い場合には,睡眠薬を用いることもある.
 その一方で,こうした疾患の発症に影響した要因についても検討し,適切な介入を行うようにする.その際には,個々の患者の職場での状況を丁寧に検討し,仕事の量や質,上司や同僚の態度などの職場要因,当該社員の職務遂行能力や対人関係能力などの個人要因などを考慮して治療の方針を決めていく.
 職場に問題がある場合には,本人の了解を得たうえで,直接に,または人事を介して職場に働きかけ,能力や性格を考慮しながら対象となる社員にあった職務を賦与できる環境を整備する.その際,異動によって症状が改善することも少なくない.なお,職場の状況に加えて,家庭や友人関係,借金などの経済的要因など,職場以外の要因が関係している場合もあるので,多面的に検討することが大切である.」


また、雅子様を取り巻く環境について、
「妊娠の報道についても、宮内庁よりもメディアの方が早く発表したことから考えて、非常に近い存在の者が情報をリークしている可能性が高い」、との指摘が複数のパネリストからあった。
そんな衆人環視の状況に置かれて、普通でいられる人の方が珍しいのではないか?と思う。

ディスチミアの場合も、適応障害の場合も、環境を変えることは対処法のひとつのようである。(メランコリー親和型の場合には上表にあるように、諸刃の剣となる可能性もあるようだが)
なので「"職場"環境を変えようと思ったら、長い期間海外に行くなど思い切った対処が必要」との意見にも頷ける。



雅子様は決して不真面目ではないのである、と自分も思う。
真面目すぎる人が陥る病気。

精神疾患というと、なんだか根性論・精神論をもちだす人がいるので腹が立つ。
がんになった人に、がんになったのはお前が悪い、という人はそうはいないのに、
心の健康を害した人に対しては、甘えている、サボっている、やる気が無い、と言う。

適応障害、ディスチミア、メランコリー、多分それぞれの要素が混ざったような人もいるに違いない。
こういう症状もある、自分の状態は病の一側面だ、と理解できると、少しだけ気が楽になるのでは?

ちなみに適応障害の対策については、

「物事に対する冷静な判断をする、
円満な人間関係を形成する、
などの普段からの自己肯定を行うことです。
また、周囲に適切な人間関係が存在しないようならば、無理な関係を求めず、
自分に合った友人の出現を待つような、ゆとりを持つことです。

そして自己の存在証明を他者に求めず、自分で存在を作り出すことです。
あまり高い理想や夢は作らないようにして、
現実認識を正確に且つ冷静に持つようにすることです。」

との記述があった。
参考: http://www.portnet.ne.jp/~kobe-ptc/index6/tekioushougai.html


それにしても、なぜ真面目な人の過剰適応が生じるのか。
別の機会に調べてみようと思う。

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